はじめに
二項分布の分散って導出するのが大変ですよね。
確率母関数またはモーメント母関数を計算出来れば、その確率変数のモーメントを簡単に計算出来ます。
確率母関数とモーメント母関数の使い分けは、離散型確率分布なら確率母関数、連続型確率分布なら母関数という使い分けをします。
確率母関数の定義
確率変数\(X\)が離散型確率分布に従うとき、確率母関数は下のようになります。
確率母関数
$$G_X(t)\equiv E\left[t^X \right]=\displaystyle \sum_{x=0}^{\infty} t^xf_X(x)$$
これは\(t\)の関数になっていますが、確率母関数が計算出来れば嬉しいことがたくさんあります。
例えば、確率母関数を\(t\)で1階微分すると、
\(\displaystyle \frac{d}{dt}G_X(t)= \displaystyle \sum_{x=0}^{\infty} xt^{x-1}f_X(x) \)
となり、\(t=1\)を代入すると、
\(\displaystyle \frac{d}{dt}G_X(1)= \displaystyle \sum_{x=0}^{\infty} xf_X(x) \)
となり、\(X\)の期待値\(E[X]\)を得ることが出来ます。
また、2階微分をすると、
\(\displaystyle \frac{d^2}{dt^2}G_X(t)= \displaystyle \sum_{x=0}^{\infty} x(x-1)t^{x-2}f_X(x) \)
となり、\(t=1\)を代入すると、
\(\displaystyle \frac{d^2}{dt^2}G_X(1)= \displaystyle \sum_{x=0}^{\infty} x(x-1)f_X(x) \)
となり、\(X(X-1)\)の期待値\(E[X(X-1)]\)を得ることが出来ます。
\(E[X(X-1)]\)の計算が出来れば、分散も簡単に計算出来てしまいますね。
二項分布の確率母関数
二項分布の確率母関数を計算します。
\(X \sim B(n,p)\)のとき、\(f_X(x)={}_nC_xp^x(1-p)^{n-x}\)なので、
\(G_X(t)\)
\(=E\left[t^X\right]\)
\(=\displaystyle \sum_{x=0}^n t^x {}_nC_xp^x(1-p)^{n-x} \)
\( =\displaystyle \sum_{x=0}^n {}_nC_x{(tp)}^x(1-p)^{n-x} \)
\(=(tp+1-p)^n\)
最後の部分では二項定理の逆を用いました。
まとめると二項分布の確率母関数は下のようになります。
二項分布の確率母関数
$$G_X(t)=(tp+1-p)^n$$
ただし、\(X\sim B(n,p)\)
二項分布の確率母関数の利用
\(\displaystyle \frac{d}{dt}G_X(1)\)を計算してみます。
\(\displaystyle \frac{d}{dt}G_X(t)\)
\(\left(=E\left[Xt^{X-1}\right]\right)\)
\(= \displaystyle \frac{d}{dt} (tp+1-p)^n\)
\(=n(tp+1-p)^{n-1}\times p\)
\(=np(tp+1-p)^{n-1}\)
よって、
\( \displaystyle \frac{d}{dt}G_X(1) =E[X]=np\)
次に\(\displaystyle \frac{d^2}{dt^2}G_X(1)\)を計算してみます。
\(\displaystyle \frac{d^2}{dt^2}G_X(t)\)
\(\left(=E\left[X(X-1)t^{X-2}\right]\right)\)
\(= \displaystyle \frac{d^2}{dt^2} (tp+1-p)^n\)
\(= \displaystyle \frac{d}{dt} np(tp+1-p)^{n-1}\)
\(=\displaystyle n(n-1)p^2(tp+1-p)^{n-2}\)
よって、
\( \displaystyle \frac{d^2}{dt^2}G_X(1) =E[X(X-1)]=n(n-1)p^2\)
\(E[X]=np\)と
\( E[X(X-1)] =E[X^2-X]\)\(=E[X^2]\)\(-E[X]\)\(=n(n-1)p^2\)から、
\(V[X]=E[X^2]-E[X]^2\)
\(=n(n-1)p^2+E[X]-E[X]^2\)
\(=n(n-1)p^2+np-(np)^2\)
\(=np(1-p)\)
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