はじめに
先月2022年11月実施の統計検定1級に見事合格することが出来ました。
試験本番では焦ってしまった事もあり、皆さんの助けになればと思い、合格体験記を残します。
ストーリー仕立てになってますので、合格までの軌跡をお楽しみください。
勉強開始前
統計検定1級の勉強を開始した時期は、2021年の11月頃だったと思います。
その時の私の統計学の学力は、統計検定準1級に合格出来るレベルでした。
また、高校で数Ⅲは勉強済みで、微分積分は身についている状態でした。
統計検定準1級には2021年の10月末に合格し、期間でいうと2週間の勉強で合格出来たので統計学が自分に結構向いているかもと自信に満ち溢れていました。
勉強方法
勉強方法としては次の3つのことをしました。
- 公式の参考書『統計学』を読む・解く
- 過去問を解く・ブログにアップする
- 『現代数理統計学の基礎』で理解の穴埋めをする
次にそれぞれ具体的にやったことを以下にまとめます。
『統計学』を読む・解く
統計検定1級の合格には必須のこちらの参考書です。
この本は口コミでは意外と
- 検定試験の出題範囲の項目が淡々と書き並べられている
- 行間の飛躍が多い
などの良くないという意見を見たことがありますが、個人的には最高の1冊だと思います。
行間の式の証明などが簡略化されている分、自分で証明をして埋める力が身に付きますし、出題範囲に対応した項目のみで構成されているので、合格するための近道をすることが出来ました。
正直、この本と過去問さえあれば合格出来る力は身につくと感じました。
『統計学』の進め方としては、1章から読み進めていき、例題や演習問題にぶつかったら何も見ずに問題を解く。統計応用に関しては、自分の選択する科目の部分のみを読んで、解くというように進めていきました。
『統計学』を進める上で特に意識すべきは次の2点です。
- 行間を自分で埋めること
- 理解出来なかった箇所・解けなかった問題は記録しておくこと
行間を自分で埋めること
『統計学』は式の証明が省略されているので、導出を自分でしながら読み進めていきました。
例えば「\(\chi^2\)分布の確率密度関数は\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi}}x^{-1/2}\exp\left(-\frac{x}{2}\right)\)である」という文章にぶつかったら実際に標準正規分布の確率密度関数を用いて導出をしながら進めました。
1行1行読んでいく過程で理解できない箇所が無いように、自分で証明することが重要だと思います。
理解出来なかった箇所・解けなかった問題は記録しておくこと
上で行間を埋めることについて書きましたが、導出方法が分からず、ネットで検索しても理解できない場合もありました。
他にも『統計学』を読み進めていてぶつかる例題や章末問題で解けない問題もたくさんありました。
このような問題は参考書の1周目ではすぐ諦めて、2周目以降で解くために記録するようにしていました。
↓↓実際のメモの様子
p23 例題, p28 問1.1[3][4], p46 前半文章, p47 定理2.3.3 証明, p125 後半文章, …
過去問を解く・ブログにアップする
『統計学』をとりあえず1周導出しつつ読んで、演習問題も解いたら早速過去問演習に取り掛かりました。
過去問は2015年から2021年分を準備しました。2021年分は統計検定の公式サイトからpdfを取得出来ました。
過去問は多い方がもちろん良いですが、金銭的な問題や他の参考書を買うお金に充てたい場合は、2016年以降分を準備できれば十分だと思います。
過去問を解く上では次の3つのことを意識しました。
- 時間制限は気にせず解く
- 解けなかった問題は記録しておくこと
- 自分の回答をブログにアップすること
時間制限は気にせず解く
過去問を解くときは1度も時間を計らずに解いていました。
解く速さは演習を進めていくうちに早くなっていくので、あまり気にすることはありません。
それよりも1級では理解の深さが求められるので、どれだけ1問1問に時間を掛けて深く理解していくことが重要です。
特に過去問1周目でどれだけ深く問題に当たれるかが大事です。
2周目以降は解答を見た後なので、どうしても最短で答えにたどり着く解答をしてしまうんですよね。
私は過去問1周目では深さを意識して、大問1つに2時間掛けることもありました。
その際、いろんな解き方を試してみて遠回りすることで所見の問題に対する思考力が鍛えられたと思いました。
解けなかった問題は記録しておくこと
『統計学』と同じですが、解けなかった問題は記録しておきました。
これは2周目、3周目では間違えた問題のみを解き直すことで効率が良くなるからです。
↓↓実際のメモの様子
2021年数理 問1[4]△ 問2[1][2][3][4]
2021年応用 問1[1][2]計算ミス[3][4]
・・・
自分の回答をブログにアップすること
過去問を解いた後は、自分の回答で間違い直しをした後、完全な回答を作成してブログにアップしました。
ネットにアップする際は、完全な解答をキーボードで入力して複写することになるので、自分の解答を俯瞰的に見直し、矛盾点を見つけるいい機会になりました。
しかしこの作業はとても時間が掛かり、1つの大問で多くて2時間ぐらい掛かりました。
特に数式を\(\TeX\)形式で入力する必要があり、めちゃくちゃ大変でした。
ブログにアップする目的は、他人が見ても分かるような完全な解答を作成する力をつけることなので、この目的が達成されるのであれば、ブログにアップする必要もないのかなと思います。
↓↓こちらにアップしています。
『現代数理統計学の基礎』で理解の穴埋めをする
よく統計検定1級を勉強している方のブログで紹介されている『現代数理統計学の基礎』です。
竹村本と呼ばれる『現代数理統計学』と同じく有名な本ですが、私は試験本番の2週間前ぐらいに購入しました。
正直買うの遅すぎました。
『現代数理統計学の基礎』の使い方をしては次の2点だけでした。
- 『統計学』で理解できなかった部分を調べる
- 演習問題を解く
『統計学』で理解できなかった部分を調べる
『統計学』を3周ぐらいした後でも、理解できず放置されていた箇所があったので、『現代数理統計学の基礎』で辞書代わりに調べました。
特にスコア検定やワルド検定の部分は、どうしても理解できませんでしたが、『現代数理統計学の基礎』のおかげで理解することが出来ました。
演習問題を解く
試験前で過去問を解き尽くしてしまっていたので、演習問題を解きました。
隅から隅まで解いたわけではないですが、2章~8章の章末問題の内、見た感じ解きたい問題だけ解きました。
解いていく中で、過去問にはたまたま出てこなかった分野があり、知識の穴埋めをするいい機会になりました。
全体スケジュール
勉強は以下のようなスケジュールで進めました。
途中、スケジュール以外でもちょくちょくサボることはあり、合計1か月ぐらいは勉強しなかった時期もあります。
- 2021年10月統計検定準1級合格
- 2021年11月統計検定1級勉強開始
- 2021年11月『統計学』1周目開始
30%ぐらい理解出来ない所あり
- 2022年2月過去問1周目開始
正答率は30%ぐらい
- 2022年6月勉強をサボる
1か月ぐらい統計検定の勉強をサボる
- 2022年7月E資格勉強開始
E資格の勉強で2カ月間は統計検定1級の勉強から離脱
- 2022年8月E資格合格
- 2022年9月過去問1周目の続き
- 2022年9月過去問2周目開始
1周目で間違えた問題のみ
- 2022年10月過去問3周目開始
2周目で間違えた問題のみ
- 2022年10月『統計学』2周目
過去問の答えを覚えてきていたので『統計学』に切り替える
1周目で理解できなかった所のみ - 2022年11月過去問4周目開始
3周目で間違えた問題のみ
4周目でも間違える問題はほとんどない状態になる - 2022年11月過去問復習
過去問1周目で正解した問題のみ
本番では解ける問題を落とさないことが重要かつ数カ月も前に解いた問題なので復習した
正答率はほぼ100% - 2022年11月『現代数理統計学の基礎』を購入
- 2022年11月『統計学』3周目
2周目でも理解できなかった部分
『現代数理統計学の基礎』を辞書代わりに使って、穴埋めをする
これでも理解できなかった部分は諦める - 2022年11月『現代数理統計学の基礎』の演習問題
2章~8章の章末問題の内、見た感じで気になる問題のみ
間違えたら解答を読んで理解のみで解き直しはなし(時間が無かった) - 2022年11月試験本番
試験直前
試験当日に見直すために暗記チェックリストを作成しました。
ポアソン分布や指数分布など有名な分布のモーメント母関数や非復元抽出の期待値、分散などは覚えておくと試験本番で導出した時不安にならずに済みます。
標準正規分布の10%, 5%, 2.5%上側パーセント点なども覚えておくと良いでしょう。
チェックリストをまとめて後は自分を信じるのみです。
私はこれだけ勉強したから大丈夫だと割と自身がある状態でした。
試験当日
統計数理と統計応用(理工学)を受験しました。
会場に着くと理工系大学に来たかのような懐かしさを覚えました。
ほとんどが男性で、「THE・理系」のような見た目で全員賢く見えました。
自席ではボロボロになった統計学の教科書を読んでいる人や一番多かったのは『統計学』を読んでいる人が多かった印象でした。
私はルーズリーフ1枚にまとめた自作チェックリストをひたすら見直しました。
統計数理
解く前から「過去問で見たことあるような問題」を選択すると決めていたので、大問1の初めて見るような問題には見向きもせず大問2,3,4を選択しました。
実際にこの作戦が功を奏し、大問2つは最後まで解くことが出来、1つの大問は3/4まで解くことが出来ました。
回答した部分が全てあっている訳ではないことを加味すると、合格の自信としては80%ぐらいの手ごたえでした。
ただ、回答用紙の各ページに受験番号を書くのを忘れていて焦ってしまったので、みなさん当日は気を付けてください。
よく書き忘れの発生する箇所は以下の部分です。
- 表紙の受験番号
- 表紙の選択した大問番号
- 各ページの受験番号
- 各ページの大問番号
統計応用
試験前から「統計数理っぽい問題」と解くと決めていたので、当日は5問から自動的に3問に絞られました。
大問1つは最後まで解くことが出来、1つの大問は3/4回答出来、1つの大問は2/4ぐらい回答出来たかなという感じでした。
統計数理に比べてかなり時間制限が厳しかったです。
合格の自信としては、50%ぐらいでした。
合格発表
統計数理、統計応用のどちらも合格していました。
さらに驚くべきことに統計数理、統計応用のどちらも優秀賞に選ばれておりました。
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
統計数理 | 998 | 224 | 22.4% |
統計応用 | 911 | 188 | 20.6% |
科目 | 合格者数 | 最優秀賞 | 優秀賞 |
---|---|---|---|
統計数理 | 224 | 22 (上位9.8%) | 53 (上位33.5%) |
統計応用 | 188 | 20 (上位10.6%) | 44 (上位34.0%) |
最後に
かなり長くなってしまいましたが、私の合格までの流れを一通りまとめました。
みなさんの為になったでしょうか?
記事に書いていることやその他のことでも、聞きたいことがありましたがぜひコメントに書いて送信してください!
勉強の際にお世話になったサイト
条件付き期待値・分散でお世話になりました。
ワルド検定・スコア検定でお世話になりました。
2018年統計数理の導出でお世話になりました。
2015年など古い過去問の導出の際にお世話になりました。
重回帰分析の部分の理解でお世話になりました。
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